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アコースティック(ACUSTICO)+占い(MANTICA)=アクスティマンティコ ワールド・ミュージック? トラッド? プログレ? フォーク? カンツォーネ? ええい、ややこしい! 彼らはどのジャンルにも属さず、どのジャンルも股にかける。ローマを中心に活動しながらも、アメリカ・ヨーロッパ・日本と世界を股にかける。彼らは滋味豊かなサウンドと文学的センス溢れる歌詞で僕たちに魔法をかける。僕らはどうしたってこのバンドに目をかける。家 |
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| 『サンタ・イザベル』 〜空間と可能性〜 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3rdアルバム:『サンタ・イザベル』(Santa Isabel、2004年)1. La strada verso casa (4,40) ♪試聴 2. Musica immaginaria (4,23) ♪試聴 3. Emanuel Carnevali va in America (4,40) ♪試聴 4. Metà canzone (2,59) ♪試聴 5. Conseguenze di un nome (4,27) ♪試聴 6. Coda di topo (4,50) ♪試聴 7. La canzone dell'equilibrio (4,09) ♪試聴 8. LE OSTERIE di Alda Merini (0,51) ♪試聴 9. Pablo, Garcia e gli altri (4,22) ♪試聴 10.Santa Isabel (1,59) ♪試聴 11.Distanza (4,07) ♪試聴 『サンタ・イザベル』(Santa Isabel)は、アクスティマンティコが2004年に発表した全11曲入りのフル・アルバムで、1998年の結成以来3枚目の作品にあたる。前作から2年の時間を挟んで制作され、2004年7月5日、ローマで開催中だったファンダンゴ・ジャズ・フェスティバルでお披露目となる演奏が行われた。 アクスティマンティコのアルバム・ジャケットは、4枚目のライブ盤を別として、基本的に同じ構成をとっている。背景は無地で、中央に月やコオロギ、おもちゃのヨットを水面に浮かべる人々といった画像が配置してあるのだが、おそらくまず人の目を引くのはその背景の色である。日本では今のところ購入できないデビューアルバム『アクスティマンティコ』(Acustimantico、1998年、画像右)は黒。2枚目の『あこがれの季節』(La bella stagione、2002年)は青。そして、この『サンタ・イザベル』は白。もちろん偶然ではない。彼らによれば、これは色の三部作ということのようだ。各アルバムに色を付ける。レトリックではなく、文字通り。当初は思いつきの気まぐれでスタートしたこの試みだが、最終章となるこのディスクに採用された白には、それなりの意味づけが行われている。それは空間と可能性の色。なるほど確かに、白という色にはまっさらなイメージがあって、たとえば白いキャンバスには、その空間がこれからどう変化していくのだろうかという色とりどりの可能性を想起させる。その彼らのぼんやりと意図する「空間と可能性」という鍵言葉を軸に、このアルバムを概観してみよう。歌詞に目と耳を向けてみると、実際のところ、収録曲には何かしら空間を感じさせるものが多いことに気づく。将来に不安を抱えながら、アメリカへと移民する若き主人公が、旅立つべきか留まるべきかと船上で思案を重ねる『エマヌエル・カルネヴァーリ、アメリカへ行く』(#3)は出立、自宅へと続く坂道を歩きながら自我について想いを巡らす『家への道のり』(#1)は帰還をそれぞれテーマとしているし、文字通り『距離』(#11)というタイトルも見受けられる。ただし、一口に空間と言っても、高さ・幅・奥行きを伴う物理的なもの以外に、精神的・概念的なものもあるはずだ。言わば、「不可視の空間」。上記の3曲にもその要素は十分感じられるのだが、以下の曲はむしろそれをメインとして扱っている。失われたもの、中途で放り出されたもの、未完成なものを可能性のあるものと捉えなおす『半分の歌』(#4)だって、ものごとの欠けた部分やこれから満ちる部分を対象にしている点で、目には見えない空間についての歌と言えよう。詩の朗読『アルダ・メリーニのオステリーア』(#8)は、オステリーアと呼ばれる大衆的な食堂兼居酒屋に集い、何かを口に運んではアブサンをあおり、酔いにまかせて別の世界を夢想する詩人たちを温かい目で描写しているのだが、居酒屋という空間で生まれる(やもしれない)名もなき別の世界という想像上の空間についての作品だ。また、『想像上の音楽』(#2)は、音楽の約束事や規則から逃れようとして頭の中で音楽を奏で続けたミュージシャンの物語である。考えてみれば、人間の想像力もまた広大な沃野を連想させる。想像はものづくりの原点であり、可能性の宝庫だ。言語学には疎い僕だが、想像と創造が日本語において同一の音を有しているのも、きっと偶然ではないのだろう。少なくとも、このアルバムを聴いていると、そんな確信を抱かされる。 ところで、白いアルバムと言えば、僕が真っ先に思いつくのはザ・ビートルズの俗にホワイト・アルバムと呼ばれる『ザ・ビートルズ』(The Beatles、1968年)である。前年発表の『サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band、1967年)とは異なり、コンセプトも複雑な音響効果も排したこのアルバムは、現代音楽の様々な要素をごった煮にした闇鍋状態の作品で、グループとしてのまとまりよりも実質的なソロ活動のスタートといった趣が強いこともあり、ビートルズが持つ音楽的な可能性の豊かさと解散の予兆を同時にはらんでいることで知られている。では、アクスティマンティコのこの「ホワイト・アルバム」はどうか。ここにも複数のジャンルを自在に越境する音楽的な豊潤さはあるものの、それは遠心的というより求心的で前向きなものだ。詩作を専門的に担当するダニーロ・セルヴァッジ(Danilo Selvaggi)。相変わらずの迫力ある美声で聞き手を幻惑するラッファエッラ・ミズィティ(Raffaella Misiti)。そしてほとんどの曲作りとギターを手がけるバンドマスターのステーファノ・スカトッツァ(Stefano Scatozza)。彼ら3人を核としたオリジナルメンバー6名に加えて、今作からはヴァイオリンとハーモニーのスペシャリストであるカルロ・コッス(Carlo Cossu)が正式メンバーとして招聘されていて、前作までの2枚からさらに音の厚みが増している。彼は2003年からライブでもサポートメンバーとして活躍しており、その実績を既存のメンバーが高く評価したのだろう。どの曲でも演奏はこなれているし、しっかりとアクスティマンティコの音に融和している。なかでも、『ねずみのしっぽ』(#6)と『パブロ、ガルシアとその他の詩人たち』(#9)はコッス加入の成功を裏付ける曲として外せない。 さて、こうして新しい仲間を加え、いつも通りセルフプロデュースで制作した今作は、「らしさ」を失うどころか、以前にも増して彼らの持ち味を発揮したかっこうだ。60年代のいわゆるカンツォーネのようなキャッチーなメロディーが、ジャジーなリズムやサウンドに乗ってスウィングする。こうした様式を基礎に、アクスティマンティコは驚くほど多様で複雑な曲を供してくれる。スピーカーから紫煙がくゆってきそうなものもあれば、スカのリズムを取り入れていたり民謡の要素を加味したりと、がやがや賑々しいものもある。ハムエッグ大輔が『あこがれの季節』の評で書いているように、彼らが持つ静と動、あるいは緩と急のバランス感覚には目と耳を見張るものがある。こうした彼らの振れ幅を余すことなく体感できるのが、『想像上の音楽』(#2)であろう。ラッファエッラのアカペラから始まり、コッスの弦が後の展開を予感させるようにヴィブラートで入ってきて、緩から急へとテンポが漸進的に変化する。かと思えば、いったん静止してはまた加速度的に大団円へ突入していく。頭蓋というホールでのみ音を編み続けた音楽家の心象を描いた歌詞とあいまって、この曲はアルバム内でも珠玉の作品だと僕は思う。こう書くと何か豪華絢爛たるアルバムに思えるかもしれないが、正直に申しあげて、決して派手なものではない。こぢんまりという言葉がぴったりくるくらいだ。ただ、地味というのとは違う。再生スイッチを押せばすぐにおわかりいただけるだろうが、この優れたディスクは、緻密な計算とそれを支える確かな技術でできている。はっきり言って、あまり隙がない。でも、そうした音楽についてまわる息苦しさもない。空間と可能性を軸に、自我の問題をモチーフにした、どこか切なさを帯びながらも、ラストの『距離』を聴き終えた後には、胸に温かい何かが残る愛おしいアルバムだ。色が白いという安易な理由もあるけれど、この作品には冬が似合うような気がする。蜂蜜やシナモンを入れたホットワインでも舐めながら、窓外のしんしん雪を眺めるゆったりとした午後。そんなシチュエーションがぴったりだ。じっくりと丁寧に、こんこんと聴き込みたくなる1枚である。 最後に「サンタイザベル」というタイトルだが、これは太平洋のソロモン諸島に実在する、沖縄本島三つ分くらいのわりと大きな島である。人口は3万人。ただし、メンバーの誰かがこの島と所縁があるというわけではない。ダニーロ・セルヴァッジが地図を開いて何とはなしに見つけたというだけのことだ。遥か彼方にあるその島のことはメンバーの誰も知らないし、今後も訪れる可能性は低いだろう。でも、だからこそ、彼らの想像力がむくむくと湧き上がる。「いったいどんなところだろう」と想いを巡らすことができるわけだ。そんな一種の遊びの装置として、このタイトルは機能している。「空間と可能性」を広げるには、勝手知ったる長靴型の半島よりは、見ず知らずの熱帯の島をタイトルに冠したほうが良かったのかもしれない。 <文:ポンデ雅夫> =お知らせ= アクスティマンティコの輸入盤CDは、大阪ドーナッツクラブが運営するオンライン・アートショップ『藝の環(Geinowa)』でお買い求めいただけます。価格は、どのアルバムも2500円(送料250円が別途必要)。輸入盤ですから歌詞の対訳や解説は付属していません。イタリアで販売されているまんまでお届けします。ただし、大阪ドーナッツクラブでは、歌詞の訳やドーナッツ・メンバーによる曲の聴きどころを解説した文章を順次アップしてまいります。サイトを閲覧しながら、CDを聴きながら、アクスティマンティコを余すことなく味わってください。 取り扱っているのは、以下の3枚です。 2ndアルバム:『あこがれの季節』(La bella stagione、2002年) 3rdアルバム:『サンタ・イザベル』(Santa Isabel、2004年) 4thアルバム:『ディスク・ナンバー4』(Disco numero 4、2005年)▲このページのトップへ戻る |
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