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ドーナッツたちのコラム

悩ましき翻訳の日々
知られざる幼年期のエピソード 3

  随分ご無沙汰してしまいましたので
  もうお忘れになっているかもしれませんが
  ダリオ・フォー(Dario Fo)の幼少時代のお話の続き



  前回は、ファブラトーレのお話をしました。

  幼少時代に接したファブラトーレの存在が、フォーと、フォーの演劇に大きな影響を与えた、ということはフォー自身の語るところではありますが、彼のまわりで物語を語っていたのはファブラトーレだけではありませんでした。

  フォーが幼少時代を過ごした土地の漁師。彼らもまた、ファブラトーレたち同様、奇想天外なお話を物語っていました。

  漁猟網を繕いながら、談話するかのように、物語る彼らは、自分がその場にいたかのように、その話の主人公であるかのように話しました。

  昔話を語るように第三者として三人称で語るのではなく、役者のように一人称で彼らは語りました。

  日本風にいうと、講談ではなく、落語的な語りだったのではないかと、私は想像しています。物語をきかせる、のではなく、物語を演じ語る。そういう語りだったのではないでしょうか。



  このように物語る人々に囲まれて生活しながら、物語構造、喜劇における逆転構造、演じることなど、今後の彼の演劇に必要となる要素に知らず知らずのうちに触れていたフォー。

  弟フルヴィオ(Fulvio)とともに、まずは人形劇というかたちで、これらの経験を昇華しはじめます。

  フォーとフルヴィオは友人たちを観客に、ちょっとした物語を人形劇で語りはじめます。そしてまだ幼い彼らは、自分たちで木彫り人形をこしらえるほどに、人形劇に熱中していきました。

  この人形劇という演劇形態を通して、演じるという行為とは別に、フォーは芸術に興味を持つことになります。

  フォーの中に芽生えた芸術―絵画、造形芸術への情熱は、彼をミラノのブレラ美術アカデミーでの学びへと向かわせます。そして、その後の大学(建築科)への進学へとつながっていくことになります。


  フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア(Friuli Venezia Giulia)州コルモンス社の限定白ワインのラベル
  『平和のワイン』(Vino della pace)のラベル、ダリオ・フォー、2000年
  サインの傍らには、「平和は大勢の仲間で飲むべきものだ」とのメッセージが添えてある。


  自作戯曲『虎の話とその他のお話(訳は筆者)』(Storia della tigre e altre storie
  舞台用ポスターの下絵、ダリオ・フォー、1979年

  <文:ツィスティーけいこ>

  =参考文献=
  Invito alla lettura di Dario Fo, Andrea Bisicchia, 2003, Mursia
  La storia di Dario Fo, Chiara Valentini, 1997, Feltrinelli


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