(一瞬の静寂の後、戸をたたく乾いた音。テレーザ・ママは立ち上がり…)
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| 母親 |
マリア様、どうぞ私たちをお守りください
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| 霊媒 |
奥さんっ、立ち上がらないで! すべて台無しになります。座ってください! 霊が応えました。 (一瞬の間) ピエーロさん! そこにいるなら、もう一度戸をたたいてください。 (戸をたたく音) ほら、霊はそこにいるのです。あなたたちは集中して。ピエーロさん! あなたは現世に降り立ったのです。そこにいるのですね? わたしたちは、あなたの話を聞きたい。話してくれますね? (舞台の奥からスポットに照らされながら幽霊が登場。白い服を着ている。誰も彼に気付かず) ピエーロさん、話すことができないのですか?
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| 幽霊 |
話せないことはないさ。オレに何か用ですか?
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| 母親 |
(ちいさな声で) ベッポちゃん、ピーナちゃん。ママ、心配だわ。上手く行くかしら? |
| 霊媒 |
では、ピエーロさん、答えてください。どこに宝くじの賞金を隠したのですか?
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| 幽霊 |
宝くじの賞金だって? オレは宝くじなんて当てたことないよ。前にバザーでトイレット・ペーパーを当てたことがあったけど。 |
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| (原文7ページ) |
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| 母親 |
(ちいさな声で) 霊媒師さん、ピエーロはうそつきなんです。だまされないでくださいな。ピエーロは宝くじの賞金を当てたんです。これは確かなの。 |
| 霊媒 |
それじゃあ、ご自分でおっしゃってくださいな。 |
| 母親 |
わ、わたしが?! |
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| 霊媒 |
はい。
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| 母親 |
ピエーロ… ピエーロ…? |
| 幽霊 |
なんです? |
| 母親 |
ん? でも、ほんとうにピエーロなの?
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| 幽霊 |
まさしく、オレはピエーロだ。 |
| 母親 |
それじゃあ、最愛の妻テレーザの質問に答えなさいね。 |
| 幽霊 |
テレーザだと? そんなやつ知らないぞ。
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| 母親 |
ほへ? わたしを忘れたというの? ベッポちゃんもピーナちゃんも忘れた? |
| 幽霊 |
知らないね。
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| 母親 |
霊媒師さん、だまされないで。彼はウソをついてるんです。 |
| 霊媒 |
あの世から来た者よ、あなたは本当にピエーロなのですか? |
| 幽霊 |
ああ、そうだよ。だから呼んだんじゃないのか? |
| 霊媒 |
う〜ん、しかし、本当にピエーロ・デル・メンガさん? |
| 幽霊 |
なんだと、デル・メンガ? 確かにオレはピエーロだが、ピエーロ・サポネッタだ。 |
| 霊媒 |
では、あなたはピエーロ・デル・メンガさんじゃない? |
| 幽霊 |
そうさ。どうやら人違いだったみたいだな。オレはピエーロ・デル・メンガじゃないよ。
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| 霊媒 |
じゃ、どうしてここへ来たのですか? |
| 幽霊 |
それはだな、誰かがこのあたりで「ピエーロ」を呼んでるって言うからだよ。それで、はるばるやってきたんだ。しかし、とんだ勘違いをされたもんだ。 |
| 霊媒 |
あなた、生前はどこに住んでいたんですか? |
| 幽霊 |
悲しみ通り26番地さ。 |
| 霊媒 |
どうして亡くなったんです? |
| 幽霊 |
それがわからないんだよ。医者はオレのことを元気そのものだと言ってたんだから。女房はオレが酒を飲みすぎたんだと言いふらしてたがね。それより、もういいだろ? 帰らしてもらうぜ。 |
| 霊媒 |
ピエーロさん、間違って呼び出してしまってごめんなさい。我々はもう一度、デル・メンガさんを呼び出してみます。あなたはお帰りください。 |
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| (スポットが消え、ピエーロは部屋の角にある椅子に腰掛ける) |
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| 霊媒 |
みなさま、ちょっとした手違いで、我々は別の霊を呼び出してしまいました。明晩にでもやり直すことにしましょう。では、電気をつけてロウソクを消してください。
(起き上がって) では、また明日の晩。…夜の深い闇が、あなたがたを待っていますよ。うふふ。 |
| 息子 |
アーメン… |
| 母親 |
あ〜あ、もう幽霊はうんざり。 |
| 娘 |
おやすみなさい、霊媒師さん。今日はありがとう。また明日の晩ね。 |
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| (霊媒師退場。一同、テーブルにつく) |
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| 息子 |
へぇ〜、死者と話すことができるなんてね。 |
| 娘 |
でも、パパの霊と会えなくて残念だったわ。 |
| 母親 |
ピエーロという名前の人は何人いるのかしらねぇ。聖ピエーロさまが来なくてよかったわよ、ほんとに。でも明日の晩は、霊媒師さんにしっかりとパパの霊を呼び出してもらわないとね。また変なのが来たらやだわ。 |
| 娘 |
今日はもう遅いし、わたし明日バイトがあるからもう寝るわ。その前に、テーブルをかたづけとくわね。じゃ、おやすみ。 (立ち去ろうとしたピーナちゃんは、後ろの肘掛け椅子で座っているピエーロの幽霊に気付く。彼女は大声で叫ぶ) ママっ! ベッポ! たいへんよ!
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| 母親 |
なに?ゴキブリでもいたの? |
| 娘 |
もっと恐ろしいものよ。見て! |
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| (他の2人もピエーロの幽霊を見る) |
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| 母親 |
え…? この人って…! |
| 幽霊 |
ああ、オレだよ。 |
| 息子 |
さっきの幽霊? |
| 幽霊 |
そうさ。オレにとっちゃ、とんだ災難だよ。 |
| 母親 |
あの世に帰らなくてもよろしくて? |
| 幽霊 |
呼ばれたはいいがな…。 |
| 息子 |
なんで帰らないの? |
| 幽霊 |
か、帰りたくないんだ…。 |
| 息子 |
どうして? |
| 幽霊 |
この世に下りてくるのは楽なんだが、上がるのはたいへんなんだよ… |
| 娘 |
でもあなた幽霊なんだから、ふら〜っと上がればいいんじゃないの |
| 幽霊 |
そう、かんたんにはいかない。というか…実はな… |
| 息子 |
なになに? |
| 幽霊 |
じ、実は帰り道を忘れてしまったんだ… |

驚愕の事実が判明。あの世へ帰れなくなった人違い幽霊を相手に、三人はどうする? ご期待ください。
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